IoTという言葉が出てきた頃、何でもIoTに結び付けて騒がれました。しかし、本当に一般人にも必要かと言われると疑問があります。では、ホビイストにとってはどうでしょうか。
IoTとは
IoTとはInternet of Thingsの略で「モノのインターネット」と言われています。今までオフラインで動作するのが一般的だったものがネットワークに接続できるようになり、それらから得た情報を有機的に組み合わせて処理することで、今まで対処できなかった問題を解決しようというものです。
ただ、この言葉が世に現れて現在までに、騒がれたように一般生活に普及したかというと疑問があります。
確かにネットワークに接続できる冷蔵庫が発売されたり、ホームコントロールでスマホからエアコンの電源を入れたりはできるようになりましたが、それが本当に必要かといえば従来のタイマーコントロールなどで十分な気がします。ホームコントロールを使おうとすれば使う規格を合わせて、それに対応した機器を揃える必要があります。そのためか、先見的なユーザーを除いて目に見える形では普及していないように思えます。
もちろん、農作物の育成状況管理など農業分野や工業分野、一般人から見えない部分では飛躍的に普及しています。スーパーなどで値札が電子ペーパーで集中管理されるようになったのも、無線通信技術の進歩によるものでIoTの一種と言えるかもしれません。
IoTの「肝(キモ)」は、入力となる各種センサー情報が、ネットワーク経由で収集し処理され、出力となる駆動系や表示系に指示を出す流れです。
したがって、一般家庭ではそのようなセンサーを必要とすることがあまりないのが原因だと思います。
では、ホビイストにとってはどうでしょうか。
電子工作の今昔
私が電子工作を始めた頃はともかく何もありませんでした。
電子工作は必ず電源を必要としますので電池を使うか、長期間稼働させるならAC100Vから電源をつくるしかありませんでした。部品もトランジスタ、ダイオード、抵抗、コンデンサなどのディスクリート部品しかなく、ロジック用もICしかありませんでした。
そして電気製品は白物家電とラジオ、テレビぐらいなので、作るものすべてが新しいものとなりますので、非常にワクワクしました。インターネットなどは無く雑誌だけが情報源なので読み漁って習得し、学校でも授業も聞かずに自分の考案した回路図を描いていました。
そして今、ディスクリート部品は様々な機能を持ったLSIに集約され、ネットワークという通信手段も簡単に利用でき、マイコンというプログラム可能な制御装置も入手できます。今の時代、こんなことができたらと思うものは、ほとんどが製品となって売られています。
IoTが騒がれる以前は、ネットワークに繋げるマイコンなどは企業の技術者しか使えませんでしたが、今は部品屋や通販サイトで簡単に入手できます。そのため個人で作れるものもレベルが上がりプロ顔負けの機能を持つものでも個人で作ることができます。
しかし、殆どのものが製品として販売されている状況では、IoTと騒がれても昔ほど自分で作ろうと思えるものはありません。
ホビイストにとってのIoT
それでもIoTの勉強はしようと書籍を読んでみたのですが、どうも実際に作ってみようという気が起きません。例えばこちらの本、
での工作事例はこのようなものです。
- 鼓動を感じるタマゴ
- バースディケーキシミュレータ
- カラーピッカー
- ボール転がし
- トイレみまもり鳥
最初の3例は必要性を感じず、その次はスマホゲームで似たものはいくらでも見つかりますし、最後の例はわざわざ作るまでの必要性を感じません。本という形態を取る以上、何かしらの事例は必要でしょうが、あまりにも製作意欲が削がれるものばかりです。他にも雑誌で見たものには、縁の下にネズミが居付いていないか調べるロボットとか、外の明るさを感知して自動でカーテンを開く装置などがありました。
ホビイストにとっての工作とは創作であり、ひらめきを形にすることにワクワクすることが大切です。学習は真似て学ぶことが重要でも、あまりにも興味がわかないものではその後が続きません。
それならばできることを知って、自分が問題視しているものと合致するものがないかを考えてみるのがよいでしょう。
例えばこちらのページはM5Stack、M5StickというIoTのコントローラーに接続できるモジュールの一覧です。
- Sensors(M5Stack)
温度、湿度、人感、距離、指紋、色、ジェスチャー、明るさ、電圧、電流、脈拍など多数あり、頻繁に新しい商品が追加されています。これらを見てひらめくものがあれば、そのセンサーとM5Stickを入手してサンプルプログラムを実行すればどんなことができるのかを実感できます。例えばジェスチャーセンサーを使えば、簡単なことならジェスチャーでパソコンをコントロールできそうです。実際に使ってみたところジェスチャーの認識がイマイチで実用的ではありませんでした。このように実際に使って感じ取ることは大事です。
したがって、本や雑誌で紹介されているものではなく、できることを知って自分の解決したい問題と合致するものがあれば製作するのがホビイストのありかたでしょう。
まとめ
IoTで盛り上がっていた状況も落ち着いてきました。X68000Zという古いパソコンを今の技術で再現するプロジェクトは予定の3倍もの資金を集めています。一方、同じ古いパソコンであるMSX2を再現するMSX0は、IoTに特化したことで予定資金に届くかが微妙な状況です。これを見てもIoTというものの世間一般の認識が伺えます。
とはいえ、昔とは違いホビイストにとってのIoTという手駒の可能性は無限大です。問題視していることは人それぞれですので、今の技術でできることをまず確認してそれを使って問題解決できるかを考えてみてください。今のホビイストに求められるのは回路設計技術ではなく、斬新な発創力です。
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